こんばんは。
今年に入ってから「トランスクライブ/アナライズ」といった項目をギターの練習へ組み込みました。
トランスクライブは一般的に演奏を採譜する耳コピーを指すようなのですが、個人的には自分でソロを採譜した譜面を元にとことん演奏を模範することを指す言葉のような気がします。
今回ピックアップした楽曲は前々から気になっていたSonny Rollins作曲の「OLEO」という超有名なジャズ・スタンダード・ナンバー。
そんな有名ジャズ・スタンダード・ナンバー「OLEO」を通じて今年の前半は色々なことを学びたいと思った次第です。
そんなわけでコツコツと「OLEO」の様々な音源でのメロディーをトランスクライブしていました。
ここからは2021年1月中にトランスクライブできた4つのバージョン違いのOLEOを順を追ってピックアップしたいと思います。
尚、先日の生放送は以下の画像かタイトル・リンクをクリックして閲覧が可能です。
OLEOのオリジナル録音
まず、これは外せないでしょう!
OLEOのオリジナル録音ですね。
ジャズ・スタンダードの学習を始める際は必ずオリジナルの録音をリサーチしてトランスクライブをします。
このマインドはLage Lund氏とMike Moreno氏の両氏から学びました。
それでは、OLEOのオリジナル録音について簡単に解説してみたいと思います。
OLEOの初録音は1954年6月29日で、習得された音源は10インチ・レコードにてリリースされたMiles Davis with Sonny Rollins (PRLP 187)といったアルバムとなります。
10インチのレコードの存在認知度は薄いかとお思いますが、このレコードとMiles Davis All Stars, Volume 1 (PRLP 196)なる同年12月24日に録音された10インチ・レコードとのコンピレーション盤となるBags’ Groove (PRLP 7109)となるわけです。
アルバムタイトル | Bags’ Groove |
参加ミュージシャン |
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録音日 | 1954年 6月 29日 |
オリジナルのメロディーは独特
Bags’ Groove (PRLP 7109)に収録された「OLEO」のメロディーは一般的に知られる「OLEO」のメロディーとは若干異なります。
まず、第1小節をはじめとするメロディーが一般的に知られる「OLEO」のヴァージョンと異なります。(*1)
第4小節のメロディーも一般的に知られる「OLEO」のメロディーとは異なりクロマチックを用いないメロディー・ラインとなっています。(*4)
他にも異なる点はあるのですが、先日の生放送でも解説しているので動画でも確認してみてください。
それにしても、楽曲のオリジナル録音から学べることは本当に多いです。
皆さんもお気に入りのスタンダードを演奏するにあたってその曲がどういった経緯で誕生してポピュラーになっていったのか?と興味を持ってみるのも良いかと思います。
YouTubeでBags’ Groove収録版の「OLEO」内容を確認する
Paul Chambersのベース・ライン
続いてピックアップした「OLEO」はMiles Davisの数ある逸話の中でも比較的聞き馴染みのある方も多いマラソン・セッションにて収録されたRelaxin’バージョンの「OLEO」です。
Relaxin’に収録された「OLEO」はオリジナル録音から約2年の歳月が経った1956年10月26日に録音されました。
Relaxin’に収録された「OLEO」は、マラソン・セッション特有のかなりセッション寄りで実験的なアレンジと演奏が展開されています。
巷のセッションで最も参考にされる「OLEO」の演奏なのではないかと思います。
アルバムタイトル | Relaxin’ with the Miles Davis Quintet |
参加ミュージシャン |
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録音日 | 1956年 5月 11日 – 10日 26日 |
Relaxin’に収録された「OLEO」では数多くの演奏ポイントが挙げられますが、なんといってもPaul Chambersのラストのテーマ・メロディーにおけるベース・ラインでしょう!
めちゃくちゃクールなので先日の生放送からも参考にしてもらえればと思います。
YouTubeでRelaxin’収録版の「OLEO」内容を確認する
Bill Evansのピアノをギターで再現
続いてはBill Evansのセカンド・アルバムとなるEverybody Digs Bill Evansからの「OLEO」をトランスクライブしてみました。
Everybody Digs Bill Evansはオリジナルの「OLEO」の録音から約4年後に録音されニューヨークのRiversideにより1959年の3月に発売されました。
ちなみにEverybody Digs Bill Evansに収録された「Peace Piece」はMiles DavisのKind of Blueといった超有名なアルバムに収録された「Flamenco Sketches」のアイデアの元になっています。
アルバムタイトル | Everybody Digs Bill Evans |
参加ミュージシャン |
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録音日 | 1958年 12月 15日 |
Bill Evansは「OLEO」のテーマ・メロディーを全てオクターブで演奏しています。
このオクターブ演奏を「いかにギターで演奏するか?」かなり頭を使って慎重に採譜してみましたが、これはかなりのヒントになりそうです。
「OLEO」のメイン・メロディーにもヒントはたくさん隠されているのですが、Bセクションの演奏にもギターの演奏法開拓における重要なヒントが隠されているように感じます。
特にコンテンポラリーなジャズ・ギターの演奏を構築するにあたっては、ピアニストの演奏の模倣は欠かせない要素だと思います。
YouTubeでEverybody Digs Bill Evans収録版の「OLEO」内容を確認する
テーマ・メロディーの三重奏
最後に採譜していったのがMiles DavisのIn Person Saturday Night at the Blackhawkといったライブ盤に収録された「OLEO」です。
先述したMiles Davisの2つの録音はPrestige Recordsより、リリースされたのに対して今回の録音はColumbiaよりリリースされました。
アルバムタイトル | In Person Saturday Night at the Blackhawk |
参加ミュージシャン |
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録音日 | 1961年 4月 22日 |
この録音に関しては先述したRelaxin’に近い要素が多いのでここでは特にふれてはいきませんが、最終テーマにて3重奏により重厚な演奏が展開されます。
Miles Davisが主旋律を演奏し、Hank Mobleyがオクターブ下のメロディーを演奏しています。ここまではBag’s GrooveやRelaxin’に収録された「OLEO」の演奏と大差ないのですが、この録音の「OLEO」ではWynton KellyがHank Mobleyのメロディー・ラインの完全4度下でハーモナイズを加えています。
ベーシストはRelaxin’と同じく、Paul Chambersなのでお馴染みのベース・ラインも顕在です!!
YouTubeで
In Person Saturday Night at the Blackhawk収録版の「OLEO」内容を確認する
今回のリサーチを振り返って
今回のトランスクライブを通じて多くのことを学ぶことができました。
やはりトランスクライブっていい練習(?)ですね。
練習というかむしろ情報収集って感じで、個人的には実際の演奏表現に活かすためのスキルを学ぶための練習を作りあげる作業の一つといった位置付けです。
トランスクライブの目的としてメインとなるのはア=ティキュレーションとアレンジのリサーチ、ついでリズムとアドリブの音遣いのリサーチといった感じで集取していきます。
ちなみにフレージングをそのまま真似て演奏するといったことは決してしません。
というわけで、1月は練習の隙間時間を利用して「OLEO」のテーマ・メロディーのリサーチに勤しんできましたが、今月からは実践編としてMiles DavisとSonny Rollinsのソロを採譜して真似るソロのトランスクライブに挑戦してみたいと思います。
この記事を書き始めて1週間以上経過した2月9日現在ではソロの採譜は完了して、練習を通じてさらなるアーティキュレーションの追求に勤しんでいます。
これまで想像もつかなかったギターの演奏法の可能性を開拓できそうなのでまた何か発見があり次第、生放送やらSNSやらブログやらレッスンやらで紹介したいと思っていますのでお楽しみに!!
それでは。