Lage Lund ジャズギター・アドリブ分析 第1回
- 公開日 2018/08/12
- 最終更新日 2018/08/29
Lage Lund 2作目のアルバム「Standards」
今回のジャズギター・レッスンブログで参考とするフレージングソースは、Lage Lundの日本規格盤の2作目となる「Standards」に収録された「Darn That Dream」でのLage Lundによるジャズギター・アドリブ演奏から。
「Standards」はその名の通りジャズ・スタンダードを中心に演奏されており、初期のLage Lundのギタースタイルを研究する資料としては美味しい1枚である。
(ちなみにLage Lundによるアルバム1作目は「Romantic Latino -for Ladies-」である)
アルバム名 | Standards |
参加ミュージシャン |
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楽曲 |
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録音日 | 2007年 1月31日 – 2月1日 |
続いて、今回のジャズギター・レッスンブログで題材とするLage Lundが演奏したジャズ・スタンダード「Darn That Dream」について少し触れていくことにする。
ジャズ・スタンダード「Darn That Dream」
Darn That Dreamは1939年にJimmy Van Heusenにより作曲され、Eddie DeLangeにより作詞された楽曲である。
翌1940年にはBenny Goodman楽団の演奏とシンガーのMildred Baileyによって初のレコーディングが行われ大ヒットとなる。
「Darn That Dream」は本来、ブロードウェイ・ミュージカル「Swingin’ the Dream」(1939.11.29オープン)で初めて披露されたが。わずか13回の公演の後、翌年12月9日に幕を閉じている。
「Darn That Dream」のコード進行
「Darn That Dream」は大きくAセクションとBセクションとの2つのセクションにより構成され、AセクションはKey of G MajorとなりBセクションは短3度下降となるKey of E♭ Major(もしくはAセクションの同主短調のKey of G Minor)となる。
上記のコード進行は原版に忠実な「Darn That Dream」のコード進行となる。
コード進行を現代のアレンジで細かく解釈したスコアも多い、発展した「Darn That Dream」のコード進行は日本ではジャズスタンダード・バイブル、海外ではReal Bookなどを参考にしても良いだろう。
また、「Darn That Dream」のオリジナルの構成では冒頭にKay Of E♭のヴァースが挿入される。
それでは、ここからLage Lundのジャズギター・スタイルを分析していくこととする。
Lage Lundのジャズギター・アドリブソロの解説
それでは、今回取り上げていくLage Lundによるジャズギター・アドリブソロの全容をご確認いただきたい。
Lage Lund ジャズギター・スタイル 分析 ピックアップ/第1小節
なんともモダンなLage Lundによるピックアップ部分のギターソロは、楽曲のトニックであるGメジャーをベースコードに設定し、Gオーグメント・トライアドとF♯オーグメント・トライアドによるシンメトリック・オーグメントにより構築されたアドリブソロとなっている。
またF♯オーグメント・トライアドはDオーグメント・トライアドとも解釈が可能なので、2拍アタマからをD7♯5と捉えても良いと思う。
シンメトリック・オーグメント
シンメトリックオーグメントは半音違いのルートを持つ2つのオーグメント・トライアドからなるヘクサトニック(6音)スケールを指す。
スケール名 | シンメトリックオーグメント |
スケールの分類 | ヘクサトニックスケール |
構成音/ディグリー | Root ♯9th 3rd 5th ♯5th 7th |
1 – ♯9 – 3 – 5 – ♯5 – 7のダイアトニックテンションを持ちメジャー7コードに対してもマイナー7コードに対してもファンクションする汎用性の高いヘクサトニック・スケールである。
Lage Lund ジャズギター・スタイル 分析 ピックアップ/第2小節
第1小節に確認できたD7♯5を軸としたD7によるドミナントのアプローチが確認できる。ここでLage LundはE♭メロディック・マイナースケールを想定しDオルタードにてアドリブソロを展開している。
2拍目でGの5度音(D)に解決しアドリブソロ第3小節に想定されるB♭mの3度音をアプローチ音(C)の後、シンコペーションにて演奏している。
Lage Lund ジャズギター・スタイル 分析 第1小節
ベースコードはGとなるが、Lage Lundは第2小節のB♭m7 – E♭7を拡大して演奏している。
第2小節に控えるB♭m7 – E♭7は、おそらく多くの演奏者の頭を悩ませたコード進行であると同時にこの楽曲のキーとなるコード進行といえる。
しかし、Lage Lundは初めからB♭マイナーで演奏する事で違和感のないフィールドを作り上げている。
Lage Lund ジャズギター・スタイル 分析 第2小節
第1小節にて想定したB♭マイナーの♭ⅦトライアドとなるA♭メジャートライアドをLage Lundは演奏している。そのため、第1小節と第2小節はB♭m7を想定しての大きなアドリブソロとなる。
ギターソロの4拍ウラではGメジャーの3度音(B)を演奏し第3小節へ繋げている。
Lage Lund ジャズギター・スタイル 分析 第3 – 4小節
第3小節ではDrop3転回されたAm7(11)のトップ3を、第4小節ではDrop2転回されたBm7のトップ3を演奏している。
Lage Lundの想定している演奏軸はおそらく第3小節でAマイナー、第4小節ではBマイナーとなっている。
これらのコードをトライアド軸から観察すると、Gsus4トライアドとFadd♯11(no 5th)とすることも可能である。
コードを拡大解釈することによりDarn That Dream特有のコード進行によるサウンドの制約から解放されたLage Lundの歌心溢れるアドリブソロが堪能できます。
アドリブ演奏の軸をマイナーに持つことの多いLage Lundならではのアプローチや、クラスターなコードビルドなどコンテンポラリージャズギタースタイルを学習する上でお手本としたいアドリブ演奏といえるだろう。
- トニックメジャーへのシンメトリック・オーグメントの利用
- コード進行の大まかな解釈
- クラスターなコードサウンド
それでは、また。