今回のジャズギター講座はKurt Rosenwinkelの初期音源からギター アドリブフレーズの一節を抜き取りKurt Rosenwinkelの独特なギター アドリブフレーズを分析していきます。
Kurt Rosenwinkel研究 参考音源
半音上に想定するアッパーストラクチャートライアド
それではまず今回のKurt Rosenwinkelのギターソロフレーズを確認しましょう。
Key of E♭のKurt Rosenwinkelによる実際のⅡ-Ⅴ-Ⅰフレーズです。
2018年2月にギターにてトライアドを理解/練習するための教則本が完成しました!最高の出来なので気になる方は下記のリンクからよろしくお願いします。
ギターソロのクロマチシズム
今回のKurt Rosenwinkelのギターソロフレーズにはクロマチックな連結が多く確認できます。
Fm7上での2拍目から3拍目や2小節目のB♭7上での3〜4拍目、3小節目の2〜3拍目などですね。
着地点を設けそこをクロマチックで歌いきることでサウンドのあやふやさが増しKurt Rosenwinkelらしいジワジワと変化を遂げるアメーバのようなギター演奏スタイルを作り上げることが可能です(笑)
(Dave Liebmanのこの本はクロマチシズムを学ぶ上で大変役に立つものなのでこの場でオススメしておきます)
代理的なコードのサウンドアプローチ
下記のKurt Rosenwinkelのアドリブフレーズでは代理のアプローチを確認することができます。Fm7上でのCm7のコードアルペジオです。
さらにKurt RosenwinkelのアドリブフレーズからはB♭7に対してB△のアプローチが確認できますがそれは後ほど触れていきます。
ここでのKurt Rosenwinkelは解決先のE♭上からはうまくE♭△で歌い上げています。
第3小節、3 – 4拍目から4音区切りのリズムでE♭△を歌い上げている<感覚がします。
このブロック化した感覚でのサウンドの捉え方はJohn Coltraneの影響でしょうか^^
アウトなサウンドのドミナント処理
いよいよ今回のジャズギターレッスンブログにおけるメイントピックス「Kurt Rosenwinkelのアウトフレージングなギターソロ」についてです。
Kurt Rosenwinkelのアドリブフレーズの2小節目に確認出来るB♭7に対して、B△といったドミナント7thに対して半音上のトライアドによるアプローチに注目してみたいと思います。
(Kurt Rosenwinkelは本当にトライアドの使い方がうまいですね。発展したトライアドの感覚はKurt Rosenwinkelと盟友であるテナー奏者のMark Turnerとでバークリー学生時代に練り上げていったそうです^^)
サウンド自体はオルタードライクな雰囲気でB△をB♭7の観点で分析してみると、B=♭9/D♯=11th/F♯=♭13thとなります。
Kurt Rosenwinkelのこのようなトライアドアプローチはスケールとしての考えを広げるより、クロマチシズムの深度での解釈の方が柔軟に捉えることが可能かと思います。
B♭7の半音上のトライアド。
全ての音が元のドミナント7thに対して半音上となりアウトなサウンドとなります。
…これ位の解釈でいいのかもしれませんね(笑)
B♭7とBトライアドをミックスすると…
この2つの要素をミックスするとB♭HMP5↓というE♭ハーモニックマイナーを軸にしたスケールが出来上がります。
よくマイナーⅡ-Ⅴ-Ⅰの時に耳にするサウンドです。
ヘクサトニックスケールでの観点
B♭HMP5↓というスケールをヘクサトニックの観点でトライアドを2つに分解してみると…A♭dimとE♭mのトライアドに分解することが可能です。
(Kurt Rosenwinkelからの演奏のヒントを発展させていきます)
この2つのトライアドの組み合わせによりHMP5↓(ハーモニックマイナーパーフェクト5thビロウ)というスケールの特徴的なサウンドをうまく抜き取ることができます。
完成された7音スケールに対してヘクサトニックではトライアドが2つで6音となり、違いは1音だけと微々たる差に感じるかと思いますが、アプローチを2つのトライアドで捉えているので全く違った感覚でのサウンドワークが可能になります>。
Bトライアドを変形させる
ここからはKurt Rosenwinkelのソロのアイデアから個人的な解釈を加えさらなる手法の可能性に迫ってみたいと思います。
半音上であるトライアドを4声のアルペジオであるB△7にしたり5度を半音上げてB+(オーグメント)に変形させたりすることで新しいサウンドワークの道が開けます。
全くの異物であったB△を少しE♭のトーナリティーに対しての順応を持たせることができます。
B△7では長7度のA♯音(=B♭音)が加わり…
B+(オーグメント)では増5度のG音が加わります。
いずれもE♭のコードトーンですのでインサイドな雰囲気を持たせることが可能です。
私個人としてはこの様に多少インサイドなサウンドを散りばめた方がサウンドが抜き出てくる感じが少なく、メカニカルな雰囲気は抑えられるので好みではあります。
1音の違いを時と場合で使い分けることで様々な印象を綴ることができるので便利なアプローチです。是非ご賞味ください(笑)
今回のジャズギター講座はKurt Rosenwinkelのフレーズ研究といったお題でお送りしてきましたがいかがでしたでしょうか?
Kurt Rosenwinkelは現代のコンテンポラリージャズギタースタイルを築きあげた重要な人物です。
Kurt Rosenwinkelの初期のレコーディングには「これでもか!」と言わんばかりの分かりやすいフレージングが満載なのでこれからコンテンポラリーなジャズギタースタイルを学習したいという方は是非初期のKurt Rosenwinkelのギターサウンドをリスニングしてみると良いでしょう^^
下記の参考音源にKurt Rosenwinkelのオススメを貼り付けておきますのでご参考になさってください。
今回も最後までありがとうございました^^
コンテンポラリージャズギターを学習するためにおさえておきたいKurt Rosenwinkelの参考音源
Kurt Rosenwinkel | East Coast Love Affir
ここでのKurt Rosenwinkelのギターヴォイシングスタイルはそこまで奇抜なものではないにしてもシンプルな要素を聞かせるセンスがやはり凄い。
現在のKurt Rosenwinkelの録音より基本に忠実な感じの演奏スタイルはコンテンポラリージャズギター学習の初期段階では大変参考になります。
こちらは初期のKurt Rosenwinkelのカルテット作品。
ハーモニー性の高いピアノの上をどのようにKurt Rosenwinkwlは演奏していくのか?この盤はコンテンポラリージャズギター学習には一番のオススメ盤です。
この盤でのKurt Rosenwinkelの手法はとにかく分かりやすく、John ScofieldのギタースタイルにKurt Rosenwinkelは影響を受けたんだなぁと感じる場面もあります。
Kurt Rosenwinkelのアウトするフレージング感覚はこの盤を聴き込むことでまず問題ないでしょう。
Kurt Rosenwinkelの音楽活動の初期にはPaul Motian Electric Bebop Bandへ加入していた時期もあります。
このバンドでの実験的な試み(コード楽器はギターのみの構成でギターの音は歪みなどのエフェクターがのったサウンド中心、ギター アドリブフレーズはウニャウニャで摩訶不思議状態、取り上げる楽曲はチャーリーパーカーやセロニアスモンクなどのBebop中心)は後のKurt Rosenwinkelのギタースタイルに大きな影響を与えたと言っても過言ではないでしょう。
ここでのKurt Rosenwinkelのギター アドリブフレーズは上記のIntuitよりもわかりやすくさらに曲のフォーマットもわかりやすいBebopものばかりなのでKurt Rosenwinkelのギタースタイルを学びたい方にはオススメの1枚です。