Jesse Van Ruller ジャズギター・アドリブ分析
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公開日 2018/08/27
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最終更新日 2018/08/31
今回のジャズギター・レッスンブログで参考とするフレージングソースは、Jesse Van Rullerの地元であるオランダのクラブMurphy’s Lawでのライブ演奏を録音した 「Live at Murphy’s Law」の1曲目に収録された「Isfahan」でのJesse Van Rullerによるジャズギター・アドリブ演奏からお送りする。
Jesse Van Ruller 「Live at Murphy’s Law」
「Live at Murphy’s Law」はJesse Van Rullerトリオによるスリリングな演奏が楽しめる名盤である。また本作はジャズスタンダードナンバーを中心に盛り込まれておりジャズギターの学習者には嬉しい1枚である。
アルバムタイトル | Live at Murphy’s Law |
参加ミュージシャン |
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楽曲 |
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録音日 | 2004年 7月7日 – 7月8日 |
Live at Murphy's Law
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続いて、今回のジャズギター・レッスンブログで題材とするJesse Van Rullerが演奏したジャズ・スタンダード「Ishafan」について少し触れていくことにする。
ジャズ・スタンダード「Isfahan」
IsfahanはDuke EllingtonとBilly Strayhornにより作曲された、イランの首都名をタイトルとする楽曲である。
Duke Ellington楽団がかつてリリースした組曲集の一つである極東組曲 (The Far East Suite)に「Isfahan」は収録されている。
Duke Ellington楽団による組曲集は極東組曲 (The Far East Suite)の他にもラテン・アメリカ組曲ラテン・アメリカ組曲女王組曲などが存在する。
極東組曲 (The Far East Suite)
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ラテン・アメリカ組曲
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Isfahanが収録された極東組曲 (The Far East Suite)は1966年12月に録音され、翌年1967年にリリースされている。
「Isfahan」のコード進行
「Isfahan」はAセクションとBセクションとCセクションとの3つのセクションにより構成される。
AセクションではD♭ MajorとA Majorの長3度違いによる2つのメジャーキーの軸を往来するような印象である。
上記のコード進行は「Duke Ellington Real Book」に掲載されているコード進行を元にしている。
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それでは、これよりJesse Van Rullerのジャズギター・スタイルを分析していくこととする。
Jesse Van Ruller ジャズギターソロの解説
音声プレーヤー
今回のJesse Van Rullerのジャズギター・アドリブ分析対象となるフレージングは全体で第1コーラスの第4小節 – 9小節までを対象としているが、解説は第1コーラスの第5小節 – 9小節の5小節としている。
ここにJesse Van Rullerによる「Isfahan」のトランスクリプションを作成した際の動画を添付するのでご確認いただきたい。
今回取り上げているJesse Van Rullerによる「Isfahan」のジャズギター・トランスクリプションを下記のリンクにて販売中である。
(有料会員の方はページ下部の会員ページより、もしくは有料版のJesse Van Rullerによる「Isfahan」ジャズギター・アドリブ演奏分析記事にて完全コピー譜面を無料でダウンロードいただけます)
興味のある方は学習に合わせて活用いただければと思う。
Jazz Guitar Transcriptions
Jesse Van Ruller ジャズギター・スタイル分析 第1小節
ベースコードであるAmaj7に対して、Aメジャー7 コード・アルペジオを演奏している。
音声プレーヤー
ここでJesse Van Rullerは3連符によるポリリズムなギターソロを演奏している。
また、このソロでは3連符の上を3のリズムと4のリズムによる合計7音によるリズムにてJesse Van Rullerはギターソロを演奏していることが確認できる。
第1小節1拍からはベースコードであるAmaj7に対して、Ⅲマイナー代理となるC♯マイナー・トライアドを演奏することによりアドリブソロの内容を拡張していることが伺える。
音声プレーヤー
このラインも先ほどのAメジャー7 コード・アルペジオと同様なリズムでギターソロが演奏される。
Jesse Van Ruller ジャズギター・スタイル分析 第2小節
ベースコードであるA♭7に対しD♭メジャー7のコード・アルペジオをJesse Van Rullerは演奏している。
音声プレーヤー
これは後述するアドリブアイデアの代理コードとして仮定する、
第1小節と同じリズミックモチーフを継承してアドリブを構築していることも見逃してはならない。
続く第2拍ではE♭マイナー7として捉えていくこととする。
音声プレーヤー
先ほどのD♭メジャー7と組み合わせることでE♭マイナー7にフォーカスしたアドリブラインと解釈することが可能である。
音声プレーヤー
前に演奏されているE♭マイナー7の流れからはA♭ドミナント7の3度音となるC音へのガイドトーンによる着地とも捉えることが可能である。
第4拍でJesse Van Rullerは、続く第3小節のベースコードとなるD♭メジャー7 コード・アルペジオを演奏している。
音声プレーヤー
Jesse Van Ruller ジャズギター・スタイル分析 第3小節
また、Jesse Van Rullerは第3小節のベースコードであるD♭ maj7に対してⅡメジャー・トライアドとなるE♭メジャー・トライアドを演奏している。
音声プレーヤー
Ⅱメジャー・トライアドを想定してアドリブ演奏することにより、トニックに対してリディアンを表現することが可能であるが、コンテキスト的にJesse Van Rullerによるギターソロを観察すると、そう断定することはなかなか難しく感じる。
そこで第4小節に想定されたアドリブソロを確認していきたいと思う。
Jesse Van Ruller ジャズギター・スタイル分析 第4小節
第3小節にて演奏されたE♭メジャーによる演奏は第4小節にて演奏されているFマイナーにアドリブ演奏をフォーカスした結果ではないかと推測している。
音声プレーヤー
その解釈とすると、先ほどのE♭メジャーは結果的にFマイナー(9th,11th)を想定した演奏と捉えることが可能である。
音声プレーヤー
Jesse Van Ruller ジャズギター・スタイル分析 第5小節
第5小節ではベースコードのGm7♭5をシンプルに捉えGディミニッシュ・トライアドのRootと♭5度音が演奏されている。
Jesse Van Rullerによるさり気ないコード演出であるが、実は大きな役割を担っている。例えるならば文章の句読点のようなコードの活用である。
音声プレーヤー
今回のジャズギター・アドリブ分析ではJesse Van Rullerによるリズミック・モチーフの演奏術について分析をしてきた。
まるで計算されたかのようなJesse Van Rullerによるモチーフを駆使したアドリブ演奏からは、Jesse Van Rullerのとても高いアドリブ演奏のポテンシャルを感じることができる。
今回のJesse Van Rullerのリズミック・モチーフを習得するには、まずシンプルなトライアドやコード・トーンなどの音型が持つ音数に反するリズムフォーマットで練習することをオススメする。
- リズミック・モチーフ
- 大きく捉えた演奏軸と代理コード
それでは、また。