今回も前回に引き続きジェシヴァンルーラー氏のアドリブフレーズ研究をしていきます。
今回のジェシヴァンルーラー氏によるアドリブフレーズは美しいモチーフによるアドリブフレーズが特長的です。
早速譜面を確認していきましょう。
今回も最後まで宜しくお願いします!
3つのリズムモチーフがキーポイント
今回はアドリブソロの頭を参考にします。
アドリブフレーズを徐々に組み上げていくジェシヴァンルーラー氏のモチーフ展開が確認できます。
モチーフでアドリブフレーズを展開する場合はコーダルな感覚よりもモーダルな感覚でのアドリブフレーズ構築がまとまった演奏をストラクチャーするポイントです。
要はスコアにあるコードのサウンドを追いすぎないって感覚です^^
コードを追わなくてもアドリブソロのストーリー性(要点)をついているような演奏なら何だって成立します!
サイドスリップ
1つ目の演奏モチーフはソロのピックアップ部分2小節にて確認できます。この曲はD♭Keyの曲なのですがD♭から半音上にサイドスリップするような音使いでジェシヴァンルーラー氏はアドリブフレーズを演奏しています。
最初にも述べましたがこの大きいハーモニーの解釈がモチーフ作りに一役買っています。
(今回取り上げた曲のハーモーニーワーク/キーワードが半音っていうのも大きく関係しているとも思いますが…)
ここで演奏されているリズムモチーフは下の譜面のようになっています。
丁寧にアドリブフレーズをストラクチャーしていこうといったジェシヴァンルーラー氏の演奏に対する姿勢がうかがえます。
代理コードの想定
2つ目の演奏モチーフはソロ本編に入った1,2小節目です。
ここでの音使いは1小節目のD♭M7上で5度メジャーに当たるA♭M7を想定していると解釈してみました。
そのA♭M7の7度音であるG音からアドリブフレーズがスタート。
G音は同時にオリジナルコードのD♭に対してリディアンのサウンド展開となりかなりの浮遊感がソロ開始とともに演出されていますね!
強拍にコードトーンを配列するようにして1小節目の1拍目にはG音、3拍目にはC音を配置しています。
これらはA♭M7に対して7度音と3度音となるのでコードトーンと扱えます。
強拍のコードトーンに注目することで、ここでのアドリブフレーズ構築の主軸はコードトーンとアプローチノートと分析することができます!
そのまま分析していくと…
アドリブソロ2小節目ではB♭M7と捉え1拍目にD音(3度音)、3拍目にはF音(5度)が配列されています。
ここもコードトーン + アプローチノートと解釈することができますね。
さらに2小節目〜3小節頭まで開始音がコードの3度音になっている点にも注目してみましょう。
ジェシヴァンルーラー氏の演奏コントロールの素晴らしさが確認できます^^
ここでのリズムモチーフに注目すると上の譜面のようになっています。
細かい分析ですがリズムは音以上に重要なアドリブフレーズ構築のポイントです。
3連符の引力
ソロの開始4小節目から3連符でのたたみかけるようなアドリブフレーズが確認できます。
まずリズムモチーフから確認していきましょう。
3連符の頭抜きで拍の感覚をずらし、音のグルーピングを2音と4音としています。
グイーっと引っ張られるような強い引力を感じるアドリブフレーズになっています。
ジェシヴァンルーラー氏のアドリブフレージングはリズムがもつ支配力をよく表現している好例といえるでしょう。
さらに、ジェシヴァンルーラー氏のエッジの効いたギタートーンも相まってかなりスリリングな展開になっています。
音使いの方は5小節目のAM7を4小節目から先取りし、先ほど解説した3連のリズムモチーフでたたみ込むように演奏しています。
モチーフ2つ分(ソロ5小節目の3拍目)を弾き終えると一旦メロディーがストップ。
これは強力ですね(笑)
演奏中のジェシヴァンルーラー氏の中で先ほど解説したリズムモチーフがしっかりと鳴っていることが伺えます。
ブレイクの後は音のチョイスを半音下のA♭軸に変えてモチーフ演奏を再開します。
さらにここではA♭のオーグメントでの処理となっています。
ここは前のAM7のラインを考慮してのオーグメント処理と感じました。
(A♭のオーグメント処理で5度音はE♭音からE音となりAM7とのブレンドがよくなります)
そのままアドリブのモチーフは微妙に形を変えながら8小節目まで続きます。
ジェシヴァンルーラー氏の演奏コントロール
今回のジャズギターレッスン記事を執筆しながらひしひしと感じていたのはジェシヴァンルーラー氏の演奏コントロール力の高さ。
今回はデュークエリントン楽団のビリーストレイホーン氏が作曲したとされるIsfahanという曲でのジェシヴァンルーラー氏のアドリブフレーズをご紹介したのですが、この曲がなんとも言えないコード進行になっていまして…(笑)
今回のアドリブフレーズ譜面からも伺えますが半音のハーモニーワークが多発します(笑)
そんなコード進行の中をジェシヴァンルーラー氏は本当に美しく歌い上げていますね。
気になる方はThe Duke Ellington Real Bookにて御確認下さい。
演奏すると様々な解釈が生まれてなかなか楽しい曲ですよ^^
今回も最後までありがうございました!!
ジェシヴァンルーラー | Live at Murphy’s Law
“72年生まれのジェシヴァンルーラーは、95年のモンク・コンペティションでジムホールやパットメセニー、ジョンスコフィールドといった審査員らにその才能を絶賛されたオランダ出身の若手ギタリスト。
近年はクリスクロスからもリーダー作を発表しているが、国内盤としては2001年の『trio』以来、ほぼ3年ぶりの新作となるのがこのアルバムである。ジェシヴァンルーラーの地元オランダにある小さなクラブでの録音で、曲によって新旧2種類のリズム隊を使い分けている。まずはジェシヴァンルーラーの音楽が生み出す密度の高さと、ジャンゴラインハルトにも通じる“切れ味の鋭さ”に驚かされる。”
Amazon中 (後藤誠) — 2004年11月号 — 内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)