読者の確実なレベルアップを目指して日々の演奏研究を公開しているジャズギターレッスンブログ。
今回はおなじみのジャズスタンダード「On Green Dolphe St.」のテーマメロディーのハーモナイズとリハーモナイズのアイデアをシェアしたいと思います。
まずは楽曲の構成から確認していきましょう。
On Green Dolphin St. 楽曲の構成
ソングフォーム | A–B–A–C |
構成 | ラテン(Aセクション) スウィング(B&Cセクション) |
調性 | E♭メジャー |
Aセクション
1、2小節 トニックメジャー。
3、4小節 E♭から観察するとサブドミナントマイナーとなります。そのためE♭マイナーによる演奏なども良いと思います。
5〜7小節 ここでの半音下降はE♭のⅡ – Ⅴが変化したもの。
こういった半音進行の演奏は工夫のしがいがありそう。
8小節 Bセクションの頭にあるFm7へのⅡ – Ⅴとなります。
Bセクション
9〜12小節 Key of E♭のⅡ – Ⅴ – Ⅰ
13〜16小節 Key of G♭のⅡ – Ⅴ – Ⅰ
これは先程Aセクション第3,4小節にて登場したG♭と同じくサブドミナントマイナーとなります。そしてサブドミナントマイナーからトニックへの解決でによりAセクション頭のE♭に戻ります。
さて、今回のジャズギターレッスンブログではOn Green Dolphe St.のAセクションとBセクションまでのジャズギターハーモナイズ術を解説してみたいと思います。
コンテンポラリーな要素をふんだんに散りばめているので好みが分かれるかもですが…(苦笑)
では、譜面と音を確認してみましょう。
Aセクションにおけるコードハーモナイズ
第1小節
E♭メジャートライアドの3度音をraiseしたE♭sus4トライアドによるハーモナイズ。SUSトライアドはふんわりとした空気感の演出に効果的。
第2小節
E♭メジャー7コードをE♭のオープントライアドとGmのクローズトライアドにて表現しています。オープントライアドとクローズトライアドによるコントラストの効いた演出は現代的なジャズギターアドリブソロでもよく耳にする演奏アイデアです。
第3 – 4小節
G♭メジャーに対するⅡ – Ⅴを想定しA♭m7とD♭7のベーシックなコードリハーモナイズなアイデアにコードタイプに少しスパイスを効かせています。
A♭マイナーはトライアドにおける5度音を4度の音へ変更。
D♭7においてはD♭のオープントライアドに♯11thとなるG音をブレンド。結果としてD♭トライアドの5度音(A♭)と半音でぶつかるためこのようなダークなトーンが発生します。
第5小節
F7をFトライアド化。そしてFメジャートライアドのRootと3度音を2度音程で上昇させています。結果としてRootは9thに、3rdは11thへ変更されています。
第6小節
第5小節目と同じアイデアをE7のハーモニーに適応しています。
3,4拍目ではEオープントライアドによる演奏です。
第7小節
E♭メジャーをE♭sus2トライアド化。5th音をベースにもってきたヘビーなサウンドです。私の好みがバレますね(笑)
第8小節
Gm7 – C7でのスモールコードによる演出。ここでお話ししているスモールコードとはコードの3度音と7度音を利用するハーモニー技法のことを指しています。
Bセクションにおけるコードハーモナイズ
第9小節
FマイナーをFsus4トライアド化。メロディーが細かいので、カウンターポイントのコントラリーモーションを利用してのハーモナイズです。
メロディーが細かく動くところではカウンターポイント(対位法)を利用すると良いでしょう。
対位法に関しては過去に「カウンターポイントの可能性とハーモナイズへの転用」にてアイデアを綴っておりますのでそちらをご参考になさってください。
第10小節
3拍目にA♭m11を登場させていますが、これはB♭7に対するオルタード想定のアッパーストラクチャートライアド。「対象とするコードのⅦをルートにもつアイデアは新しい道を開くよ」とLage Lund先生から教わりました。
第11小節
第10小節目にて展開されたA♭m11の名残りをGdim化。これはB♭コンディミから派生するコードとなる。
この動きによりE♭トライアドの3度音と5度音が生成されるのでE♭と親和性が高くなります。
第12小節
E♭69によるBIGでFATなコードハーモナイズです。こういった節目にこそBIGでFATなコードがハマります。
E♭69と表記していますが、このコードはボトム3とトップ3と考えるのがベター。
ボトム3にはFsus2、トップ3にはE♭メジャートライアドが配置されています。
こうするとシングルラインでも利用可能となりそうですよね?
先程のトライアドのコントラストを思い出してください。
第13小節
A♭m7をここでもA♭m11化。
第14小節
メロディーが細かいのでここでもカウンターポイントのコントラリーモーションを利用しています。
トップノートに1弦解放のE音を採用することにのりサステイナブルな効果が得られます。
この手の名手はやはりBill Frisellでしょうかね。
第15 – 16小節
G♭M7をB♭(♯9)/Eに変更してみました。なにやら難解な響きですし、難解なコードハーモナイズですよね(笑)
このアイデアはG♭へ解決すると思いきや、B♭7コードを想定した動きとなっています。なぜB♭7なのかは続くAセクションのE♭に解決するためです。
さらにここではB♭7の裏コードに相当するE7を想定してハーモナイズしています。
ここでのB♭(♯9)/Eの構成音は(B♭,C♯,D,E)となるためE7から考えるとE7(♯11,13)となり、コンディミ想定のアイデアとカテゴライズすることが可能です。
ですが音的な内容に注目するよりもここでの内容はどちらかというとベースの支配力とインターバルのキャラクターに目を向けたいところ。
特殊なギターやチューニングでない限りの最低音となる6弦開放のE音は大変思い切りのあるサウンドです。コードの内声にいたってはC♯とDによる短2度音程がダークなトーンを演出して世界観を作り上げます。
聞き手に「ハッ!」とさせたい時の常套手段(?)です。
嫌われない程度に試してみてくださいね(笑)
次回はこの後半、Cセクションの解説もしたいと思いますのでお楽しみに!
- ジャズスタンダードのテーマメロディーのハーモナイズはジャズギターアドリブソロにおける方法論の学習にも大変役立つ練習法である
- 細かいメロディーは小さなコード、音価の高いメロディーにおいてはBIGでFATなコードで演出する
- 「コードはメロディー、メロディーはコード」この考え方が重要である
それでは、また。
—- 2018/08/10 追記 —-
続編となるジャズギターレッスンブログを公開しました!